「OSSライセンスを遵守」という言い回し

 巷では、よく、「OSSライセンスを遵守する」とか「OSSライセンスを遵守しなければならない」という言い回しを見かけますが、私は、この言い回しは使いません。

この言い回しも、OSSライセンスを「契約」つまりEULAのような商用「ソフトウェアライセンスの一種」と捉えている人の言い回しと思えるからです。

1. 遵守とは

 「遵守」についてネット検索すると、「公的なルールや規則に従うことを意味する一般的な言葉です」という説明がヒットします。
これを前提に考察してみます。

「公的なルールや規則」であっても、その支配下になければ、従う必要はありません。
例えば、契約であれば、双方がその内容に合意し契約が成立すると、お互いに債務と債権が確定し従う必要が出てきます。
その関係が成立して、はじめて「遵守」する行為となります。
他にも、国民になれは、その国の法律を遵守し、入社すれば、その会社の規則を遵守する必要がでてきます。

2. OSSライセンスの位置づけ

私は、OSSライセンスを著作者である開発者が示した条件付き許諾と捉えています。
何の許諾かというと、著作者が持つ著作権の行使の許諾です。

プログラムは一般に著作物であり、無償で公開されていても、著作者の著作権は有効であり、著作者に無断で再頒布することはできません。

OSSには、このOSSライセンスが付いていますから、いちいち著作者に許諾を得なくても、受領者が、OSSライセンスに記載された条件を満たした上で、頒布つまり著作権行使が可能となっています。

条件を満たさず、頒布すると、著作者の著作権を侵害してしまいます。
それは、著作権法に違反するということです。

そのため、OSSライセンスの条件を満たす行為は、著作権法を遵守するためといえます。

結局は、受領者がOSSを頒布する際に遵守すべきものは著作権法です。

OSSライセンスを契約と捉えている人も著作権法を遵守しなければならないことには変わりありません。

しかし、著作権を行使、例えば、頒布などをしなければ、著作権法に抵触しないので、OSSライセンス条件を満たす必要はありません。

それは、OSSライセンスがOSSを扱う上での「規則」を定義しているわけではないことを意味します。
従って、「規則に従う」意味での「OSSライセンスを遵守する」という表現は不適切に思います。

3. GPLの記述

GPLにも、契約として遵守しなければならないようには、書かれていません。

5. あなたはこのライセンスを受諾する必要は無い。というのは、あなたはこれに署名していないからである。
しかし、このライセンス以外にあなたに対して『プログラム』やその派生物を改変または頒布する許可を与えるものは存在しない。これらの行為は、あなたがこのライセンスを受け入れない限り法によって禁じられている。

    https://licenses.opensource.jp/GPL-2.0/GPL-2.0.html

    GPLv2での記述

    1. コピーの所有に必要とされない受諾
      あなたは、『プログラム』のコピーを受領あるいは実行するために本許諾書を受諾する必要はない。
        [中略]
      しかしながら、他の場合においては、本許諾書以外にあなたに対して『保護された作品』の普及や改変をする許可を認めるものはない。

    https://licenses.opensource.jp/GPL-3.0/GPL-3.0.html

    GPLv3での記述

    このGPLv3第9条の初期のタイトル案が「契約ではない」であったことからも、契約としての扱いが不適切である趣旨が伺えます。

    4. 最後に

     以上のことから、OSSライセンスを契約と捉えたかのような「OSSライセンスを遵守する」とか「OSSライセンスを遵守しなければならない」という言い回しを私は極力使わないようにしています。

    2026.1.22 姉崎章博